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株式上場までの流れとは?審査基準やスケジュールは?

2019.03.20 資金調達
カレンダーと人

多くのベンチャー企業にとって、IPOは目標の一つとされることが多いですが、株式上場はどのような流れで行われるのでしょうか。株式上場を実現するまでには、相応の準備期間が必要になります。東証一部や東証二部、マザーズの上場審査基準を踏まえたうえで、株式上場までの流れについて解説していきます。

上場するには

男性と女性

株式市場に上場するには、市場ごとに決められた上場審査基準をクリアして、上場審査をパスする必要があります。上場審査基準には、具体的な数値による形式基準と具体的な数値には表しにくい実質基準があります。ここでは、東証一部と東証二部、マザーズの上場条件をみていきます。

東証一部の上場基準

東証一部は大企業向けの市場です。東証一部に上場するための主な形式基準を挙げていくと、株式の面では、上場時に時価総額250億円以上、流通株式数は2万単位以上で、流通株式比率が35%以上、株主数が2,200人以上となることが見込まれることが条件です。また、3年以上前から取締役会を設置して、継続的に事業を営んでいることが求められます。純資産の額は上場時に連結純資産の額が10億円以上で、単体でもマイナスでないことが条件です。さらに、最近2年間の利益の総額が5億円以上であるか、あるいは時価総額が500億円以上で最近1 年間の売上高が100 億円未満ではないことも求められます。

このほかに、有価証券報告書等に最近2年間虚偽記載がないことや最近1年間の財務諸表等の監査意見が無限定適正であることなどの規定が設けられています。

上場審査においては、コーポレートガバナンスや内部管理体制の整備、企業経営の健全性などの実質基準も審査の対象となります。

東証二部の上場基準

東証二部は中堅企業向けの市場であり、上場するための基準は東証一部よりも緩くなっています。株式の面では、上場時に時価総額20億円以上、流通株式数が4,000単位以上、かつ流通株式の時価総額が10億円以上で、流通株式比率は30%以上になり、株主数が800人以上になると見込まれることが条件です。そのほかの条件は、東証一部と同様になります。

マザーズの上場基準

ベンチャー企業向けの新興市場であるマザーズへ上場するための基準は、東証一部や東証二部と比べると、ハードルはやや低めです。時価総額や株主数では、東証二部の半分の水準で基準を満たせます。

マザーズは株式の面では、上場時の時価総額10億円以上、流通株式数が2,000単位以上、かつ流通株式の時価総額が5億円以上で、流通株式比率は25%以上になることが見込まれることが条件です。株主数については、200人以上になると見込まれることが条件であり、500単位以上は公募を行う必要があります。また、1年以上前から取締役会を設置して、継続的に事業を営んでいることも条件です。純資産額や利益の額などに関する規定はありません。

このほかに、上場申請のための有価証券報告書の監査報告書等で無限定適正であること、上記監査報告書あるいは 四半期レビュー報告書の財務諸表等が記載される有価証券報告書等虚偽記載がないことなどの条件があります。

上場審査の実質基準では、たとえば、コーポレートガバナンスや内部管理体制の整備に関してみていくと、企業の規模や成熟度に応じて求められるため、東証一部や東証二部よりもやや緩やかです。

上場までの主なスケジュールは?

カレンダー

IPOを実現するためには、実際に申請を行う3期前から準備を始め、コーポレートガバナンスや内部管理体制の整備も進めて置く必要があります。

上場申請の3期前まで

遅くとも上場申請を予定する3期前に株式上場の意思決定を行い、準備を始めることが必要です。

上場時期や市場の決定

株式上場を目指すことが決定した後、上場時期や上場を予定する市場を決定します。株式市場は、東京証券取引所の場合、東証一部、東証二部、マザーズ、JASDAQのスタンダードとグロースがあり、それぞれ上場基準が異なります。東証一部が最も上場基準が厳しく、次に東証二部が続きますが、マザーズとJASDAQは一概に比較できません。また、名古屋証券取引所と札幌証券取引所、福岡証券取引所にも株式市場が設けられています。

株式公開準備担当者の選任

上場申請に向けて、社内の株式公開準備担当者を決めて、上場のための専門部署を設けます。経理部や経営企画室の人材が担うケースが多いですが、社内に適任者がいない場合やリソースが足りない場合、担当者を新たに採用することも選択肢になります。

資本政策の策定

資本政策とは、会社が成長するために必要な資金調達を実現するとともに、株主構成の適正化を図るための政策をいいます。

具体的な方法として挙げていくと、株式移動は既存株主から法人や個人に株式を譲渡することです。上場審査で、公認会計士や税理士などによる株価算定書の提出が求められたり、適正な価額での取引でない場合は追加徴税が行われたりすることがあります。株式移動を実施する場合には、公認会計士や税理士に株価の算定を依頼することが望ましいです。

第三者割当増資は、取引先や金融機関、オーナーや役員、自社の社員、ベンチャーキャピタルなど特定の第三者を対象に新株を引き受けさせるものです。ただし、第三者割当増資を実施すると、発行済株式数の増加により、既存株主の持株比率が低下し希薄化します。

新株予約権とは、あらかじめ決められた有利な価格で株式の交付を受けられる権利。そのうち、自社の役員が社員向けのものをストックオプションといいます。ベンチャーキャピタルからの出資を予定している場合には、新株予約権やストックオプションを発行しておくと、経営陣の持株比率の低下を防げます。

監査法人等の決定、ショートレビュー

監査法人による上場審査に必要な監査は2年分ですが、監査法人を決定し、ショートレビューを受けておくと、上場の実現に向けた問題点を洗い出すのに役立ちます。

内部統制の整備

内部統制は、業務の有効性と効率性の確保、財務報告の信頼性の確保、法令遵守、会社の資産の保全の4つの目的を達成するために整備するものです。内部統制が整備されていない状態では、経営資源が有効活用されず、経営状態が悪化する、財務報告にウソの記載がされる、法令違反によって会社の存続が危うくなる、会社の資産が不当に使用されるといったことが起こり得ます。

内部統制の整備は上場審査に関わってきますが、ベンチャー企業では整備されていないことが多いため、上場に向けて管理部門を強化していくことが必要です。

上場申請の2期前

上場申請の2期前から、監査法人による外部監査がスタートするなど、上場に向けた動きがさらに本格化していきます。

N-2期監査

上場申請の直前の2期は、監査法人による財務諸表監査が義務付けられています。ショートレビューで指摘を受けた事項を改善し、内部統制を整備していくことが必要です。

主幹事証券会社を決定

主幹事証券会社を決定し、内部体制の整備や上場手続きなどに関して専門的な意見を受けるなど、サポートを得ます。また、監査法人も交えたキックオフミーティングを開催します。

上場申請の直前期

上場申請の直前期は、上場申請書類の試案を作成するとともに、管理体制を整備して実際に運用していくことが必要です。

N-1期監査

上場申請の直前期の監査では、。ショートレビューでの指摘事項が改善された形で運用されていることが望まれます。

上場申請期

証券会社の引受審査の後、証券取引所による上場審査が行われるため、上場審査への対応に注力できる体制を整えておく必要があります。

証券会社の引受審査

主幹事証券会社が、株式市場に流通させるために株式の引受に値する企業であるか審査を行います。日本証券業協会の「有価証券の引き受け等に関する規則」に基づいて行われるおので、内部管理体制やコーポレートガバナンス、経営の健全性などが審査されます。

上場審査

上場審査基準をもとに証券取引所による審査が行われます。具体的な数値による形式基準を満たしていることが前提となり、実質基準に関する審査が実施されます。2~3ヶ月間の審査期間を経て、証券取引所から上場の承認が得られると、株式市場を果たせます。

上場費用の目安

紙幣

株式市場に上場するにあたっては、証券取引所に支払う上場審査料として、東証一部や東証二部は400万円、マザーズは200万円が必要です。上場が承認されると、新規上場料として、東証一部は1500万円、東証二部は1200万円、マザーズは100万円掛かります。また、上場の承認から上場日までに公募分は「公募株式数×公募価格×9/1万」、上場の承認から上場日までの売り出し分は「売出株式×売出価格×1/1万」の費用が必要です。

さらに、上場後は時価総額に応じて、年間上場料が発生します。たとえば、時価総額が50億円を超えて250億円以下の場合で、東証一部は168万円、東証二部は144万円、マザーズは120万円です。

実際に上場するにあたっては監査法人や上場コンサルタント会社、証券会社への支払いを含めると、数千万円程度掛かるとされています。

M&Aによるエグジットも選択肢

ベンチャー企業にとってIPOは一つの目標とされることが多いですが、株式上場を目指すには、時間も費用も必要になります。急速に業績が伸びたり、これまでにない画期的なサービスがヒットしたりしても、株式上場を果たすには上場基準を満たしたうえで、準備期間が必要になります。

そこで、早期のエクジットを目指すのであれば、M&Aも選択肢となります。M&Aであれば上場基準を満たす規模ではなくても、事業に将来性があったり、なかなか手に入れにくい技術や人材を持つ企業であったりすれば、エクジットが可能ですので、M&A仲介会社に相談してみましょう。