会社を廃業するのに必要な解散や清算の手続きの流れを徹底解説!
2019.02.24 会社・事業を売る資金繰りの悪化のみならず、後継者問題から会社の廃業を考えるケースが増えています。会社を廃業するには営業活動を終了するだけではなく、解散や清算の手続きが必要です。廃業へ至るまでには、法務局への登記や株主総会での承認、税務署などでの税務関係の手続き、社会保険関係の手続きなどが必要であり、資産の売却や債権回収を行ったうえで、債務を弁済していきます。また、業種によって必要な手続きもあります。
会社を廃業するまでに必要な手続きを具体的に解説していきます。
廃業に必要な手続きとは
会社を廃業するには、会社を解散して清算する手続きが必要になります。
解散
会社の解散とは、企業活動をやめて会社を閉鎖する行為をいいます。会社を解散するためには会社法で定められた解散事由が必要です。株主総会での解散決議を解散事由とするケースが多いです。
清算
会社の清算とは、会社の資産と負債を清算する手続きです。清算には通常清算と特別清算があり、通常清算が行えるのは債務をすべて支払うことができるケースに限られます。債務超過に陥っている場合は、裁判所の監督下のもと特別清算を行うか、破産手続きを行います。
通常清算では、債権の取り立てや資産の売却、債務の弁済を行った後、残余財産があれば株主に分配します。清算手続きが完了すると法人格が消滅します。
廃業するまでの具体的な手続きの順序
廃業するまでの解散や通常清算の手続きを順序を追って解説していきます。廃業の手続きをすべて終えるには、小規模な会社でも3ヶ月程度は必要です。個人事業では税務署に廃業届を出すだけで済むのに対して、法人の廃業は法律にもとづいて順序立って手続きを行う必要があり煩雑です。
廃業のお知らせによる周知
廃業を決めたら、営業を停止する日を決めます。そして、従業員に対して廃業に関する説明を行います。取引先や仕入れ先、外注先などの関係先に対しても迷惑がかからないように、早めに「廃業のお知らせ」などの書面を送付し、通知を行うことが大切です。
株主総会での解散決議
株主総会での解散決議を事由として解散するには、特別決議が必要です。議決権の過半数を有する株主の出席が出席し、出席した株主の2/3以上の賛成を得られると、決議が成立します。
特別決議については、『株式の保有割合による株主の権利は?会社支配に必要な持ち株比率は?』で解説しています。
清算人の選任と解散・清算人選任登記
会社を解散するには資産と負債を清算する必要があり、清算人を選任して進めていきます。清算人は、清算事務といわれる資産の売却と債務の弁済などを進める役割を担います。
清算人を決める方法には、あらかじめ定款で定めておく方法と、株主総会で清算人を決定する方法があります。また、清算人を選任しない場合には、清算人になるのは解散時の取締役です。通常は、株主総会で解散決議を行う際に、清算人も合わせて選出しています。清算人は会社の代表者が務めるか、弁護士に依頼することが一般的です。
また、業務執行の決定と清算人の監督を行う役割を持つ清算人会を設置することもできます。清算人会の設置は定款によって任意に設置できるものですが、監査役会を置く会社の場合は清算人会の設置が義務付けられています。
会社の清算と清算人の選任は登記を行う必要があり、株主総会での解散決議から2週間以内に、法務局で解散登記と精算登記の手続きをします。
税務署などへの税務関係の届出
会社を解散する際には、税務署などへの税務関係の届出も必要になります。国税の法人税は税務署、地方税の法人住民税や法人事業税は都道府県税事務所や市区町村役場が管轄です。それぞれ、解散登記を行ったことが記された登記事項証明書を添付して、異動届出書を提出します。
社会保険関係の手続き
社会保険関係の手続きは、解散が決まったらすぐに行うものではなく、会社解散後も、残務処理などのために従業員が残っている間は、社会保険への加入が必要です。従業員をすべて解雇した時点で、社会保険の適用事業所として廃止されたことになります。
労災保険と雇用保険の手続きは、一般的な業種では労働基準監督署に労働保険確定保険料申告書を提出し、保険料の精算を行った後、適用が廃止されます。建設業の場合は、労災保険分は労働基準監督署、雇用保険分はハローワークへの提出となります。また、ハローワークに雇用保険適用事業所廃止届の提出も必要です。健康保険と厚生年金は、健康保険・厚生年金保険適用事業所全喪届と健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届を年金事務所に提出します。
官報の解散公告
会社を解散した際には官報に解散広告を掲載して、債権者に会社の解散を知らせるともに、2ヶ月以上の期間を指定して債権を申し出るように通知することが、法律で義務付けられています。また、会社で把握している債権者に対しては個別に通知を送って、債権の申し出を求めます。
小規模な会社でも廃業の手続きが完了するまでに3ヶ月程度を要するのは、官報の解散公告を2ヶ月以上行わなければならないことが理由の一つです。
財産目録と貸借対照表を作成と株主総会の承認
会社を清算する時点での処分価格をもとに、財産目録と貸借対照表を作成し、株主総会で承認を受けます。貸借対照表とは、会社の資産と負債の状態を示す計算書です。
ただし、貸借対照表を作成した際に純資産額はマイナスと判明した場合には、債務超過であるため通常清算はできず、特別清算、あるいは破産手続きを行うことになります。
解散確定申告
事業年度開始日から解散日までの解散事業年度の確定申告を解散の日の翌日から2ヶ月以内に、通常と同様の方法で行います。小規模な会社では複数の年度をまたぐことは起こりにくいですが、解散事業年度以降も会社の廃業が完了するまで、確定申告は1年ごとに必要になります。
資産の売却と債権回収
不動産や機械設備、在庫、有価証券などの資産の売却と、売掛金や貸付金といった債権の回収を行います。
ただし、個別に資産を売却するよりも、会社自体を売却した方が高く売れるケースもあります。会社売却については、『会社を売るメリットやデメリットは?いくらで売れる?』で詳しく解説しています。
債務弁済
官報の解散公告による一定の期間が経過した後、債権者へ弁済します。原則として一部の債権者を優先して債務の弁済を行うことはできませんが、少額の場合など、他の債権者の権利に影響する恐れがないケースでは、裁判所の許可を得たうえで優先して弁済することが可能です。
また、清算人が回収した資産では、すべての債務を支払うことが不可能とわかった場合には、特別清算または破産手続きへの切り替えが必要です。
残余財産の確定と株主への分配
債務を弁済した後、残余財産を確定し、残余財産がある場合には株主へ分配します。
決算報告書の作成と株主総会での承認
決算報告書を作成して、株主総会での承認を得ると、法人格が消滅します。決算報告書の中身は、清算手続きの中での資産の売却や債権回収による収入、債務の弁済や諸費用などの支出、残余財産の額や一株当たりの分配額などです。
清算結了登記
株主総会での決算報告書の承認から、2週間以内に法務局で清算結了登記の手続きを行います。決算報告書が株主総会で承認されたことを示すものとして、株主総会議事録と決算報告書を添付することが必要です。支店を登記している場合は、支店の所在地を管轄する法務局でそれぞれ手続きを行います。清算結了登記を行うことで、会社の登記簿が閉鎖されます。
清算確定申告
残余財産が確定した日の翌日から1ヶ月以内に、残余財産の確定日を事業年度の終了日とする清算確定申告を行います。また、消費税関係では事業廃止届出書を提出します。
清算結了届の提出
税務署と都道府県税事務所や市区町村役場に清算結了届を提出します。
資料の保存
清算人は清算結了から10年間、帳簿や清算に関する重要書類を保存する義務があります。裁判所に保存者の選任の申立てをすることで、清算人以外が保存することも可能です。
有限会社をやめるには?
有限会社は2006年の会社法の施行によって、新たに設立することはできなくなりました。しかし、それまでに設立された有限会社は特例有限会社と呼ばれる、株式会社として存続しています。旧来の有限会社をやめる廃業の手続きは、基本的には一般的な株式会社と同じですが、一部異なる点があります。
株主総会の決議の要件が厳しい
有限会社の場合、旧来は出資者は社員とされていたため、社員総会が開かれていました。特例有限会社では出資者は株主となり、株主総会への開催へと変わっています。しかし、特別決議の要件は一般的な株式会社よりも厳しい点が異なります。すべての株主の過半数以上の出席が必要であり、出席した株主の議決権の3/4以上の賛成で成立します。また、定款によって定足数や議決権数をより厳しい基準とすることも可能です。
複数の株主による有限会社の場合、経営者の議決権の保有割合にもよりますが、廃業のハードルが高いといえます。
清算人会を設置することができない
一般的な株式会社では清算人会を設置することができますが、特例有限会社は清算人会を設置することはできません。
会社の解散で残ったお金は?
会社の解散によって清算手続きを行い、資産の売却や債券の回収を進めていった結果、すべての債務の額を上回り、債務を弁済しても残ったものは残余財産と呼ばれます。残余財産は株主に対して、一株あたりいくらという形で分配されます。
業種によって必要な廃業の手続き
一般的な廃業の手続きのほかに、業種によっては許認可などに関わる手続きが必要です。業種によって必要な手続きや期限が異なりますので、事前に行政官庁に確認し、手続きに漏れがないようにしましょう。
建設業
建設業の許可は29の業種に分かれ、業種ごとに特定建設業と一般建設業の許可があります。また、同一都道府県内のみに営業所を設けている場合は都道府県知事、複数の都道府県にまたがって営業所を設けている場合は、国土交通大臣による許可となっています。建設業の許可を受けている会社が廃業する場合には、許可を受けている官庁に廃業から30日以内に廃業届を提出することが必要です。
不動産業
不動産業を営んでいる場合は、廃業から30日以内に宅地建物取引業の廃業の届出が必要です。廃業等届出書とともに、清算人個人の印鑑証明や履歴事項全部証明書を提出し、宅地建物取引業者免許証を返納します。
宅地建物取引業も、同一都道府県内のみに営業所を設けている場合は都道府県知事、複数の都道府県に営業所を設けている場合は、国土交通大臣許可による許可です。いずれの場合も廃業の届出を行うのは都道府県であり、大臣許可の場合も主たる事務所の所在地を管轄する都道府県を経由した手続きとなります。
旅館業
旅館やホテルは旅館業の許可を受けて営業しています。旅館業を廃業する場合には、廃業から10日以内に管轄する保健所に旅館業廃止届を提出します。
飲食業
飲食業を営んでいる場合は、廃業から10日以内に店舗を管轄する保健所に廃業届を提出するとともに、飲食店営業許可書を返納します。また、営業形態によっては警察署や消防署への届出も必要です。
深夜0時以降に酒類を提供していた飲食店の場合、警察署に深夜における酒類提供飲食店営業開始届出書を届出て開業しているため、廃業する際には廃止届出書の提出が必要です。あるいは、風俗営業許可をとってスナックやキャバレーを営業していた場合には、廃止届出書と返納理由書を提出するとともに、風俗営業許可証を返納します。
あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゅう師の施術所や整骨院
廃業から10日以内に施術所廃止届を管轄の保健所に提出します。
まとめ
会社を廃業をするには、解散や清算に関わる様々な手続きが必要となり、費用も要します。また、従業員の雇用の問題が発生することが気がかりではないでしょうか。会社を清算する段階では、資産の売却を行いますが、個別に資産の売却を進めるよりも、会社売却を行った方が有利になるケースもあります。また、会社売却によって第3者が事業承継することで、従業員の雇用が守られるケースが多いです。
会社の廃業を考えた際には、「会社売却」が可能かどうか、一度M&A仲介会社に相談してみましょう。