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株式の保有割合による株主の権利は?会社支配に必要な持ち株比率は?

2019.02.17 資金調達
ビル

新株発行によって第三者から資金調達を行う場合、株式の保有割合によって株主としての権利が発生するため、経営上の意思決定に関わる可能性があります。議決権保有割合ごとの株主の権利を解説したうえで、会社支配権を維持するために必要な持ち株比率についてもみていきます。

株式の保有割合による株主の権利

株式の発行によって資金調達を行うと、経営上の意思決定に対して議決権を行使する形で投資家が参加できることになります。そのため、経営者は株式の保有割合ごとの株主の権利を把握しておくことが大切です。

議決権とは

議決権とは、株主総会の決議で賛否を示すことができる権利をいい、株式は通常、1単元株につき1個の議決権を有しています。ただし、株主の権利に制限のない普通株式以外に、議決権に制限がある、あるいは剰余金の配当に差異がある種類株式が発行されるケースもあります。また、株式の発行後に企業自体が保有する自己株式は金庫株とも呼ばれ、議決権はありません。

議決権保有割合ごとの株主の権利

ここではすべての株式が普通株式の場合を前提とし、議決権保有割合ごとの主な権利を挙げました。

議決権保有割合1%以上(あるいは300個以上)

6ヶ月前から議決権保有割合が1%以上か、あるいは300個以上の議決権を持っている場合、株主総会での株主提案権があります。

議決権保有割合3%以上

議決権保有割合が3%以上で、会計帳簿等閲覧請求権があります。会計帳簿を見ることができるということは、経営状態を把握できるということになります。さらに、6ヶ月前から議決権の保有割合が3%以上ある場合は、総会招集請求権や取締役等の解任請求権などの行使も可能です。

議決権保有割合10%以上

議決権保有割合が10%以上で、解散請求権などがあります。

議決権保有割合1/3超

議決権保有割合が1/3を超えると、株主総会の特別決議を単独で阻止することが可能です。つまり、議決権保有割合が1/3を超える株主の同意がなければ、特別決議は通らないことになるため、議決権保有割合1/3超というのは重要な数字です。

議決権保有割合50%以上

議決権保有割合が50%以上の場合、株主総会の普通決議を単独で阻止することが可能です。

議決権保有割合50%超

議決権保有割合が50%を超えている場合、株主総会の普通決議を単独で成立させることが可能です。

議決権保有割合2/3超

議決権保有割合が議決権保有割合にを超えていると、株主総会の特別決議を単独で成立させることが可能です。

特別決議と普通決議とは?

総会

株主総会での決議方法には特別決議と普通決議があり、議案を成立させるために必要な定足数と議決権数が異なります。定足数とは、株主総会を成立させるのに必要な議決権を保有する株主の出席数。議決権数とは、出席した株主のうち、議案に賛成した株主の議決権の数です。

特別決議

特別決議の場合、定足数は議決権を行使できる株主のうち、議決権の過半数を有する株主の出席が必要であり、議決権数は出席した株主の2/3以上の賛成が必要です。

特別決議は普通決議よりも重要とされる決議に適用されます。合併や会社分割、株式交換、事業の全部譲渡、重要な一部の事業の譲渡の承認といったM&Aに関わることはほぼ該当します。また、定款変更、監査等委員の取締役や監査役の解任なども特別決議が必要になります。

普通決議

普通決議の定足数も、議決権を行使できる株主のうち、議決権の過半数を有する株主の出席であり、特別決議と同じです。成立に必要な議決権数は異なり、出席した株主の過半数の賛成で成立します。

普通決議による決議が行われる議案の例を挙げると、取締役の選任や解任、監査役の選任、会計監査人の選任や解任、取締役・監査役の報酬等です。監査等委員の取締役や監査役の解任は先に挙げたように特別決議が必要です。剰余金の配当や決算の承認に関わる決議も普通決議によります。

会社支配に必要な持ち株比率

第三者に新株発行により出資してもらう場合、議決権保有割合によっては経営上の重要な意思決定の自由度が制限されます。議決権の過半数を有していれば、普通決議によって取締役を選任することができるため、会社支配権を維持することができます。しかし、会社支配権を強固なものとするには、特別決議を単独で成立させられるよう、議決権保有割合が2/3を超えていることが必要です。

また、議決権保有割合が3%以上あると、会計帳簿を閲覧することが可能となるため、財務上の機密を知られる可能性があることにも留意しましょう。

まとめ

意図せぬ形で会社支配権を失うことがないよう、新株発行によって第三者から資金調達する場合には、議決権保有割合による意識して、株主構成を考えていくことが大切です。単独では議決権保有割合が3%や過半数、2/3という数字を満たさなくても、複数の株主が共同して成立させることもあることも踏まえておきましょう。